ファミリー・サポート・センター

江東区社会福祉協議会福祉サービス課在宅サービス係ファミリー・サポート・センターの牧田慎吾主任にお聞きしました。
江東区では平成13年1月5日より社会福祉協議会への委託事業として始めたそうです。国の補助金事業です。

全国の実施状況

厚労省によると、ファミリー・サポート・センター事業は乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かりの援助を受けたい者と当該援助を行いたい者との相互援助活動に関する連絡、調整を行うことにより、地域における育児の相互援助活動を推進するとともに、病児・病後児の預かり、早朝・夜間等の緊急時の預かりや、ひとり親家庭等の支援など多様なニーズへの対応を図ることを目的とするとされています。
《実施市区町村数》 ※平成28年度実績
・基本事業 833市区町村(約半数)
・病児・緊急対応強化事業 145市区町村
《会員数》 ※平成28年度末現在( )は平成27年度末現在
・依頼会員(援助を受けたい会員) 55万人(52万人)
・提供会員(援助を行いたい会員) 13万人(13万人)
江東区では利用会員(依頼会員)4337名、協力会員(提供会員)711名となっています。利用会員は右肩上がりで増えているとのことです。

江東区の利用状況

江東区では平成29年度の利用者509名、協力者208名だったそうです。
なぜ利用者の割合が低いのかというと、月2回の利用会員説明説明会に参加し登録された方を会員(1年更新)としていますが、使い勝手が必ずしも良くないのではないかと推測されます。
その理由はエリアによってマッチングがうまくいかず、実際に協力してくれる方が見つかりにくいということが想定されます。全体でみると8割程度はマッチングが成立しています。
年間の総利用時間は13673時間で利用者一人当たり26.9時間、協力者一人当たり65.7時間となります。1回当たりの利用時間は多くが1時間(1時間未満は1時間で計算しています)とのことなので、実際の利用されている方の平均利用頻度は月2回程度、協力者は月5回強となっています。
協力会員の年齢は711名のうち、30代90名、40代252名、50代164名、60代117名、70代以上83名となっています。大半が女性だそうです。実際の稼働もほぼ同様の年齢比となっているとのことでした。
なお、江東区では利用会員、協力会員双方とも江東区の住民としているため、企業での利用は行われいてないと思われます。

申込み方法と謝礼金

申込みは主にセンターへの電話またはメールで行い、職員がマッチングをしています。原則2週間前の申込みをお願いしているそうです。一度成立すると、その後は直接のやりとりにお任せしているため、利用者がいつも同じ協力会員にお願いしているケースが多いそうです。
1時間当たり800円(平日の8時から18時)と1000円(平日の7時から8時と18時から22時、土日祝日の7時から22時)+交通費実費等となっており、お金は直接やりとりし、センターへの活動報告に双方がサインする形で運用されています。センターは手数料を一切取っていません。

活動内容

ア 保育施設の保育開始前や保育終了後の子どもの預かり
イ 保育施設等までの送迎
ウ 放課後児童クラブ終了後の子どもの預かり
エ 学校の放課後の子どもの預かり
オ 冠婚葬祭や他の子どもの学校行事の際の子どもの預かり
カ 買い物等外出の際の子どもの預かり
が対象となっています。
生後57日から小学校3年生までを対象としていますが、江東区では保育園、幼稚園等からならいごとへの送迎が3割と最も多くなっています。
事前打ち合わせ票を使用して、協力会員が利用者の希望を確認するようにしています。
江東区では利用会員宅での保育・家事援助を不可としています(可とする自治体もあるようです)。お子さんを預かる場合は、原則として協力会員の自宅を使用します。
病児、赤ちゃんの預かりは江東区では推進していません。

研修

協力会員となるためには、江東区では2日半(計12時間)の講習を行っています。1日の時もあったとのことですが、厚労省の指針では計24時間となっています。
講師は保育園の園長や子ども家庭支援センターのセンター長などにお願いしています。救命講習も行っています。

課題

  • 利用料が安価なため、民間事業者の事業参入を阻害している側面があります。江東区の場合、利用会員宅での保育・家事援助を不可としている点、病児や赤ちゃんの預かりを推進していない点が、民間参入のポイントかもしれません。
  • ホームページやパンフレットで利用条件を明示していないため、利用会員が増えにくい状況にあります。利用を促進するための積極的な情報発信が望まれます。利用説明会は利用条件をすでに知っている方に、利用促進をはかる場ととらえ、運営を行うことが望まれます。
  • ネットを使用した、マッチングや申し込みのシステムが構築されていない点も、需要を取り切れていない大きな要因です。初回は原則2週間前の申込みとしているのも、マイナス要因です。
  • ボランティアとはいえ、協力会員にとってより満足度を高めること(宿題を見てあげるとか、何か教えてあげるとか、協力会員のセールストークを示して、誰にお願いするかを利用者が選べるような工夫など)が望まれます。基本的に1時間以内の送迎だけでは、満足は得にくいと思われます。現状は協力会員が少ないのがネックになっています。
  • 研修は短時間でも効果的な内容をめざすべきです。実際に活動されている協力会員による、実体験に基づいた研修が望まれます。