発達障害とは

生まれつきの特性で、「病気」とは異なります

発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれます。
これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍しくなく、そのため、同じ障害がある人同士でもまったく似ていないように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません。

厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイトより抜粋

「生まれつき」の違いがある。

近年、発達障害についての研究は日進月歩で進んでいます。
その代表的な成果の一つは、発達障害の子どもたちには生まれつき脳機能の違いがあることが明らかになってきたことです。
たとえば、自閉症スペクトラムの人と定型発達の人とでは、セロトニンやノルアドレナリン、アセチルコリンという神経伝達物資にかかわる脳内の神経ネットワークに明確な違いがあることが脳画像研究によって見出されました。また、脳機能の活性のしかたに違いがあることも、脳画像を用いた実験的研究により明らかになりました。
かつて、自閉症は母子関係や養育の問題といわれた時代がありましたが、このように脳機能の違いを目で見られるようになったことで、それは誤りであったことがわかりました。現在では、自閉症は複数の要因が関与する多因子疾患(複数の遺伝子と環境要因の相互作用により発症すると考えられている疾患。なりやすさは遺伝するものの、必ず発病するわけではない)であるというのが定説です。
生まれつき脳の機能に違い(障害)があるといっても、それは「できない」ということではありません。
情報処理のしかたが違うだけで、覚え方が違うのだと考えられます。
脳機能において多くの定型発達の人とは異なるバイパスを活性化させて処理していくのではないかと推測されています。
つまり、いろいろなことが多くの人たちと同じような方法ではできないが、自分なりにわかりやすい方法でコツをつかめばできるようになっていくということです。

「発達障害のある子どもができることを伸ばす!幼児編」より抜粋

定型発達と発達障害は陸続き

このような生まれつきの脳の基盤にも、個人差があります。たとえ同じ診断であっても一人ひとり状態は異なりますし、特に診断基準にあてはまらなくとも、感覚の過敏性や不器用さを持っていれば問題は大きくなることもあります。
したがって、発達障害と定型発達とはグラデーションのようにひと続きにイメージすることができます。特に近年、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害は、自閉症を中核とした連続性のある「自閉症スペクトラム(連続体)」としてとらえられるようになっています。
自閉症スペクトラムをお酒にたとえて考えるとわかりやすいでしょう。
もともと度数の強いウィスキーなのか、弱いワインなのかという“生まれつきの濃さ”の違いもありますし、さらに個人においても、どのくらいの薄さかという、いわば“濃さや薄まり具合”の違いもあるというふうに考えられます。

「発達障害のある子どもができることを伸ばす!幼児編」より抜粋

「障害」はできないことではない

ここでいう個人差とは、できる子とできない子がいるという意味ではありません。
何かを学んだり身につけていったりする過程で、自然にすっと学んでいく子と、その子にあった学び方の工夫が必要な子がいるという意味です。
この差を「障害」と呼ぶとすれば、障害とは決して「できないこと」ではありません。道筋は違っても、みんなできていくのです。
すべての子どもは、それぞれにいいところ、苦手なところを持ったかけがいのない存在です。
「みんなと同じで当たり前」という前提のもとでは「できなさ」ばかりが注目されがちですが、「誰にでも苦手なことはある。苦手なことは人に助けてもらったり教えてもらったりする」という前提があれば、「どうすればできるか」に注目することができるし、少しの助言や説明を加えながらうまくやり方を教えることは、当たり前のことだとわかります。
発達障害は外見上わかりにくいだけに「どうしてみんなと同じようにできないの」と叱責されることが多いのですが、社会性に障害がある子どもに「みんなと同じようにやりなさい」と言うのは、目がみえない人に「見ろ!」と言うようなものです。
だからといってみんなと同じ行動がとれなくていいわけではありませんが、適切な行動を身につけるまでの教え方には工夫が必要です。そして、そうした丁寧な教え方というのは、発達障害があるわけではない子どもにとっても大いに役に立つのです。

「発達障害のある子どもができることを伸ばす!幼児編」より抜粋

自閉症スペクトラム障害とは

現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。症状の強さに従って、いくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。典型的には、相互的な対人関係の障害、コミュニケーションの障害、興味や行動の偏り(こだわり)の3つの特徴が現れます。
自閉症スペクトラム障害の人は、最近では約100人に1~2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。

典型的には1歳台で、人の目を見ることが少ない、指さしをしない、ほかの子どもに関心がない、などの様子がみられます。対人関係に関連したこのような行動は、通常の子どもでは急速に伸びるのと違って、自閉症スペクトラム障害の子どもでははっきりしません。保育所や幼稚園に入ると、一人遊びが多く集団行動が苦手など、人との関わり方が独特なことで気づかれることがあります。言葉を話し始めた時期は遅くなくても、自分の話したいことしか口にせず、会話がつながりにくいことがしばしばあります。また、電車やアニメのキャラクターなど、自分の好きなことや興味のあることには、毎日何時間でも熱中することがあります。初めてのことや決まっていたことの変更は苦手で、なじむのにかなり時間がかかることがあります。
思春期や青年期になると、自分と他の人との違いに気づいたり、対人関係がうまくいかないことに悩んだりし、不安症状やうつ症状を合併する場合があります。就職してから初めて、仕事が臨機応変にこなせないことや職場での対人関係などに悩み、自ら障害ではないかと疑い病院を訪れる人もいます。子どもの頃に診断を受け、周囲からの理解を受けて成長した人たちの中には、成長とともに症状が目立たなくなる人や、能力の凸凹をうまく活用して社会で活躍する人もいます。

注意欠如・多動性障害(ADHD)とは

発達年齢に見合わない多動‐衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。
学童期の子どもには3~7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。
男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。

7歳までに、多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が現れ、そのタイプ別の症状の程度によって、多動‐衝動性優勢型、不注意優勢型、混合型に分類されます。
小学生を例にとると、多動‐衝動性の症状には、座っていても手足をもじもじする、席を離れる、おとなしく遊ぶことが難しい、じっとしていられずいつも活動する、しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい、他人の会話やゲームに割り込む、などがあります。

不注意の症状には、学校の勉強でうっかりミスが多い、課題や遊びなどの活動に集中し続けることができない、話しかけられていても聞いていないように見える、やるべきことを最後までやりとげない、課題や作業の段取りが下手、整理整頓が苦手、宿題のように集中力が必要なことを避ける、忘れ物や紛失が多い、気が散りやすい、などがあります。

多動症状は、一般的には成長とともに軽くなる場合が多いですが、不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと報告されています。
また、思春期以降になってうつ症状や不安症状を合併する人もいます。

学習障害(LD)とは

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しい状態をいいます。
有病率は、確認の方法にもよりますが2~10%と見積もられており、読みの困難については、男性が女性より数倍多いと報告されています。

全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが難しい状態を指し、それぞれ学業成績や日常生活に困難が生じます。
こうした能力を要求される小学校2~4年生頃に成績不振などから明らかになります。その結果として、学業に意欲を失い、自信をなくしてしまうことがあります。

厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイトより抜粋