中岡亜希さんの調査活動(海外)

便利な介護用品ではなく、人生を楽しむために必要なモノやコトを

彼女はこれまでに、ドイツやフィンランド、カナダを実際に訪れ、海外のユニバーサル事情をリサーチしています。
中でも印象に残っているのは、何よりも「楽しむ」という要素が随所に感じられると いうことだったそうです。

「特にドイツで開催された国際福祉機器展では、機器や用品のいずれも手にとりたくなるような、ワクワク感に満ちたエッセンスがありました。
決して重苦しくなく、生活を楽しむためにも配慮されている。
さすがはインダストリアルデザインの先進国だと感心しました」といいます。

日本のものは便利ではあるし、技術的に高い水準なのは事実ですが、欲しくなるようなデザインではないという感想。
「日本製品を悪くいうつもりはありませんが、“遊び”の精神みたいなものが少々足りないように思います」と続けます。
介助される側、そして介助する側にも、毎日を楽しむ余裕が持てる要素がつけ加 えられれば、福祉に対するイメージも明るくなっていくのではないでしょうか。

バリアフリーでなくても自由に外出できたヨーロッパ

また、ヨーロッパには古い街並みが残っており、石畳の道が あったり、トラム(路面電車)が走っていたりと決してバリアフリーではない環境です。
しかし、不便は感じなかったといいます。

「誰もがさりげなく手を貸してくれる。それが何よりも大きいですね」重いドアを子どもが開けてくれたり、ちょっとした段差があれば、そばにいる人がすぐにサポートしてくれる。
そんな意識が浸透しているのだそう。
日本だと周囲に遠慮してしまいがちな彼女ですが、向うでは自然にふるまえたといいます。

▲バスにスロープが装備されているのは当たり前。混雑している時には、車椅子やベビーカーで乗車してくる人のために乗客が自ら降りることも。

車椅子でも友人たちと雄大な自然を堪能できたカナダ

「カナダでも同様で、もともと移民の国だったことから、互いの違いを認め、尊重することが当たり前なんです」とのこと。とりわけ、同地では雄大な自然が有名ですが、人気のマウンテンリゾートウィスラーでは、富士山でも使った「HIPPO」に乗り、山頂まで行けるかを係員にたずねたところ、いとも普通に「楽しんでおいで」といわれたそうです。
「山頂では、かなり高齢のおじいちゃんも杖をつきながら歩いていましたし、ベビーカーを押している人も見かけました」ロープウェイが用意されていることもありますが、周りの人たちがちょっと手を差し伸べれば、より安全に楽しめる場所になることを目の当たりにしたといいます。おかげでカナディアンロッキーの景色を堪能したり、オーロラを見物できたりとカナダの自然を十二分に満喫。また、バンクーバーではバスに乗り降りするたびに、並んでいる人や通りすがりの人が手伝ってくれたそうです。

▲山頂へ向かうゴンドラ。車椅子のまま乗ることができる大型のものもある。

▲ウィスラーの山頂。圧巻の景色を誰もが楽しむことができる。