第12回

波瀾だった過去・12(堕ちていく16歳)


  • チームを辞めた頃
    地元の同級生の紹介で
    同じ中学だけど
    ろくに学校に来なかった
    同級生のS君と出逢い
    すぐに彼と仲良くなった



    二人とも複雑な家庭環境で
    すぐに意気投合したのもあるけれど
    きっとあの時お互いに会ってすぐ
    恋に堕ちたのだと思う







    すぐに彼とは付き合う事になり
    彼と知り合った事で暴走族やら
    不良のお友達や仲間が一気に増えた



    彼と集会に出て
    バイクで夜の街を走っている時が
    一番楽しかった







    世の中から外れてる自分を

    悲劇のヒロインみたいに感じ

    勝手に正当化して

    非行の行動に走る







    そこでもそうして
    居場所を求めていたのだと思う













    そして私は
    お小遣い稼ぎにまた水商売を始めた







    そのお店は今で言うキャバクラで
    後輩の女の子と一緒に入店したこともあり
    働いてる女の子も似たような若い子が多く
    初めてホステスをした時のような
    苦痛な想いはさほどなかった





    だけど場所柄

    来るお客さんはヤクザ屋さんか

    違法なギャンブル店をやってるような
    そんな人たちばかりw





    そしてこの頃
    人生のツラさから現実逃避するために
    私はシンナーやスピードなど
    薬物に本格的に手を出し始めた











    好きな人と一緒に居ても
    心の隙間が本当に埋まることなんてなくて


    淋しい者同士がただ一緒に時を過ごし
    ただ一緒に薬物をして現実から逃れる
    そんな関係だった











    誰も私という人間を
    心から愛してくれることはなくて
    親でさえも遠い存在









    愛してほしくて
    認めてほしくて
    心の中はいつも叫んでいるけれど
    誰にも届かない





    ただただ孤独感と闘う
    そんな毎日











    そもそも16歳で

    しかも薬物依存状態でキャバ嬢をしても

    許される場所だったのだから
    今考えると一体どんな職場だったのかと思う





    Sくんと喧嘩をしてしまったある日
    ある暴力団の組長さんがお店にやって来た







    怖いもの知らずだった私は
    その人が何者なのか

    よくわからない状態で席に着き
    その組長さんに

    彼との愚痴やら人生の愚痴をこぼし始めた




    人生を捨てかけた小娘が
    半分やけくそ状態で仕事していたのだから
    本当によく勤まったと改めて思う









    その日の仕事を終え

    帰ろうとお店を出た時
    黒塗りのベンツが目の前に止まり
    見るからに怖そうなお兄さんが降りて来て
    私に頭を下げてきた




    「組長が話したいと言ってるので
    来てもらえませんか?」





    無礼が多かったはずの私の接客が

    意表をついたのか
    何故か私は

    その組長さんに気に入られた











    そのあと何度かお食事に誘われたけれど
    当時16の私に対し組長は確か50歳位で
    お父さんのようなその方に対し
    もちろん恋愛感情など持てるはずもなく
    口説かれても全くもって

    私は応じることが出来なかった









    そもそも

    その時の私は
    彼氏であるS君がとにかく大好きだったし
    正直彼には全然大切にされてなかったけれど
    いつ呼ばれても会いに行けるようにしてたほど
    私は彼が本当に好きだった





    だから

    他にお誘いや付き合って欲しいと言われても
    S君以外とは考えられなくて

    きっぱりと断ってきていた







    ちなみに

    当時S君の元にその組長の若い衆から


    「沙織と別れろ

    じゃないと蒲田に住めないようにするぞ」


    と電話があったという話を
    数年後に彼から聞いてビックリした











    心から信じられる人も
    本当に帰れる場所もなく
    身体はドラッグでボロボロになっていく








    そうして現実逃避してる時だけが
    ツライ人生から逃れられる瞬間だった






    同年代で制服を高校に通う
    普通の女の子を見ていると


    今自分の居る場所が
    どれだけ底辺なのかを思い知らされ
    苦しくてたまらなかった









    帰るところがあり
    迎えてくれる家族が居て
    安心して眠れる場所がある人たち





    そんなごくごく普通の暮らしをしてる人たちが
    とっても羨ましかったし
    それによって余計に自分が情けなくなる


    死にたくなる。。。












    同じように孤独を抱え
    心の奥ではきっと叫んでいる
    いわゆる不良の仲間たちと
    そんな負のスパイラルに

    どんどん堕ちて行く









    「死にたい」


    「いつ死んでもいい」


    「いっそ消えてなくなりたい」







    そんな事しか考えていなかった16歳