第51回

波瀾だった過去・51(偽装離婚の偽装)

13〜14年ぶりに再会したK


ちょこちょこ呼び出されて
一緒に飲んだり
お店では必ず指名してもらったりと
そんな関係が続くようになってすぐ
昔のお客さんであるYさんとも
私は再会を果たした


「久しぶり〜」


Yさんは何も変わってなく
当時からの”お兄ちゃん”のような
なんとなく頼り甲斐のある雰囲気も関係性も
全く変わってなかった


当時を振り返りつつ
今は子どももいること
色々あったことなど近況報告をして
私はYさんともまた縁が繋がった


相変わらずなんの仕事をしてるのか
その辺りはよくわからなかったが
まぁでも堅気ではなさそうな
かと言ってヤクザ屋さんでもない
Kと同じような裏側ギリギリの
そんな世界に相変わらず居るようだった



週3日だけの夜の仕事だったが
昔の縁が色々繋がりだし
お金目的だったはずのバイトが
いつの間にかちょっとした発散になりつつあった



けれど、そうは言っても
旦那さんの仕事のストレスが減るわけでも
収入が戻るわけでもなく
旦那さんとの喧嘩もまた増えていく


イライラがまた増えた彼は
家族サービスの約束をすっぽかして
パチンコに行くこともあった


それに対して文句を言う私

逆ギレして怒鳴って
新築の家の壁を殴り穴をあける旦那さん



私の中で”離婚”の文字が
また浮かび出す




そして私は
金銭的な問題を解決しようという意味で
旦那さんに離婚を提案した


「とりあえず一旦籍抜かない?」

一瞬びっくりする旦那さん


「籍を抜いて離婚をしたら
母子家庭の手当ても出るし
色々助かることも多いし
とりあえず一旦籍抜こうよ」


「んーーー、わかった」


勿論金銭的な理由で提案したのだが
”もし今後なんかあったらそのまま別れられるし”
という思いもあったのだと思う


”この先何かあったら、このまま別れればいいし”
というちょっとした打算と
身軽になりたい何かが
正直私の中にあったのだと思う



きっと夜の仕事に戻り
表の世界の人間じゃないけど
過去の繋がりもできて
何か私の中で逃げ道のようなものを
作れる気がしたのだと、そう思う



一緒には住んでいたけれど
離婚した方が何かと金銭的に便利だから
ということを理由に
一見偽装離婚のような形で
私たちは離婚届を提出した



私の旧姓の「城戸」という苗字


城戸に戻ったところで
本籍には誰もいない

私一人ぽっちの戸籍


この前あんなことがあった父の名前である
「城戸」という苗字に未練もなかったし
むしろ「城戸」に戻ったら
父の後妻のお母さんも嫌がるだろうと
そんな気持ちもあり
苗字は旦那さんの苗字のまま
子供達の親権は私ということで
とりあえず籍だけを抜いた




そんなある日
お店で二人組のサラリーマンの席に
ヘルプで着いた


身体の大きなごっつめの男性の方の隣に座り
いつものように仕事をする


見た目は本当にごっつくて
パッと見は堅気?と思うけど
聞いたら私より少し年下で
しかも名刺をもらって見たら
証券会社の人だった


彼は指名で別の女の子を呼んでいたが
「俺、落ち着いた大人の女のがいいんだよね」
と言って私に興味を持ってきた


なんとなく羽振りのよさそうな雰囲気と飲み方


”私は相変わらずこういう人に好かれやすいんだなぁ〜”
なんて、その時は特に何も思わず普通に接客をした


聞けば、今は証券会社で働いているが
今月いっぱいで辞めて
来月から転職するとのこと


ずっと夢だった警察官を諦めきれず
年齢的にタイムリミットになる前にチャレンジしたいと
この度警察官の試験の受け
晴れて合格したらしい


それでの転職ということだった


私は普通に
素晴らしいことだと応援し祝福した



その彼から連絡先を聞かれ食事にも誘われたが
指名の子がいるし・・・と私は当初断っていた



「いや、あいつは妹みたいなもんで
そういうんじゃないから大丈夫だって!」

なかなか強引に誘ってくる


その後その指名の子が戻ってきたけれど
「いいよ!いいよ!全然!」
という感じで、結局私は半ば強引に
そのお客さんと連絡先を交換することにした




父の後妻のお母さんとあんなことがあって
人間不信になっていたはずなのに
なんだかんだとすぐに人を信用してしまう学習能力の無さを
この後激しく思い知らされることになるなんて
知りもしないで・・・